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東の方角がじりじりと紫に染まっているのを、瞼の裏で感じた。
なんの変わりもない平日の、いつもと同じ徹夜明けの、だるい
体と働かない頭で、サガはゆっくりと瞬きをする。今日は晴れ
るのだろう、と思った。 アイオロスは窓の向こうを眺めている。教皇宮の見張らしは抜 群に良い。日が昇るまで、もう少しあった。室内はまだ暗い。 朝の空気と夜の空気が丁度半々ほどで混ざりあっている。狭い ソファの上では寝返りもろくに打てない。徹夜明けの、ぼろぼ ろの顔を両手で覆った。指に当たる睫の感触を確かめるように、 瞬きを数回繰り返す。窓の向こうを見ていたアイオロスが席を 立った。 「サガ、休むといい。私も少ししたら、休むよ」 「ああ」 サガの寝転ぶソファからちょっと離れた場所に、アイオロスの 寝床はある。なんとなく仮眠場所は決まっていた。 サガが、体を捻ってアイオロスの方をじっと見ている。アイオロスはちょ っと笑って、サガの頭の側にしゃがみこんだ。彼の額を軽く撫 で、柔らかい髪をすく。 「そんな顔をして」 「見えるのか?」 「見えるよ。目が慣れた」 「にこにこしている」 「サガだって、見えているじゃないか」 癖のない笑顔はアイオリアともよく似ていた。覆い被さるよう に影が迫り、額に唇が押し当てられた。サガはゆっくり瞼を閉 じる。 おやすみのキスは短い。ちゅ、と軽く音を立ててアイオロスの唇が離れた。 「おやすみ、サガ」 「おやすみ、アイオロス」 サガは少し物足りないような顔をしている。頬を撫で、長い睫 にもう一度キスした。しばらく髪を撫でていると、やがて静か な寝息を立て始める。 アイオロスは頭をかいた。 (この顔を見ないと、一日が終わった気がしない、なんて、な!) 部屋が薄明るい。朝日が少しずつその強さを増して来ている。 もう六月が来るんだなあ、とアイオロスは思った。 |