それはもう、色んな事がありました。
覚えていられない程、構っていられない程、色んな事がありました。
人が死んだり、師が死んだり、私も死んだり、 とにかく何だかもう、とにかく、ごちゃごちゃしていたのです。
死んだ人間が生き返る位で驚いてはいけない。
死んだ人間が動いてまわる世界を私は見ました。
眩暈がします。
私は、死が終焉だと思っていた。
そこまで行けば、終わるから、取り敢えず、そこまでは頑張ろうと思っていたのです。
一応、私も聖闘士です。
キンキラキンの鎧がとても似合う聖闘士ですから、 職務は果たさなければなりません。


13年間という時間を指折り数える事に何の意味がありましょう。
繰言は嫌いです。
私はその時まで、一応、頑張る気でいましたので、 恨みがましく年月を数えたり等はいたしませんでした。
意地と言うか、只、寧ろ、恐ろしかったのかもしれません。
数えれば、負けるような気がしたのです。
敗北の日々を送るなど!
そんな女々しい生き方は極めて御免です。
牡羊座は、常に、強く、前向きに、逞しく、我儘に振舞うものです。
私は、師から、そう教わりました。
亡き師は優しかった。
ジャミールの地を愛そうと思いました。
冤たる日々を泣いて過ごし、過去を惜しみ、恨みつらみを指折り数える、
そんな生を送る事を、師が許すはずがありません。
私は、師の教えだけは、裏切りたくなかった。


取り敢えず、私は頑張ったので、これで終わりだと思いました。
亡き師は誉めてくれました。私の脳内で、沢山誉めてくれました。
どうせ終わりなのですから、最後くらい良い夢をみたって罰は当たらないでしょう。
私は牡羊座らしく散りました。
13年間も、20年間も、12時間も、大した意味を持たなかった。
私が生きていた時間、それが私の時間の全てでした。
別れとは、死とは。
散るとは。巡るとは。


こんなに白い花だったとは少々驚きです。
春が又巡る。
ぐるりと延びた時間に、今度こそ眩暈がしそうです。
ああ、本当に回っているではありませんか…空が。
この花は散るのが早い。
似たようなものでしょうか。私の時間も、この花の時間も。
ぐるりと、花びらは緩慢に渦を巻き、何億もの白となって、触れるでもなく去りました。
春は好きです。


笛の音が聞こえてくる様。
近く散る命なら、今、私は何を頑張りましょう?






戻る